1995 Fiscal Year Annual Research Report
自然災害後の復興過程における地域住民の生活選択と地域社会の変容に関する研究
Project/Area Number |
07610181
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
横田 尚俊 山口大学, 人文学部, 助教授 (10240194)
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Keywords | 都市災害 / 生活再建 / コミュニティ / インナーシティ / 地域住民組織 |
Research Abstract |
本研究では、阪神・淡路大震災を中心に、被災後の住民生活の変容と生活再建をめぐる諸問題、さらにはそれらをめぐるコミュニティレベルでの地域住民組織の対応や被災コミュニティの変容に焦点を合わせ、さまざまな資料の分析と被災地における実態調査を実施した。その結果、現時点で、以下のような知見が得られた。 1.阪神・淡路大震災では、特に、大都市インナーシティの老朽木造住宅密集地に被害が集中し、そこに居住していた高齢者層、低所得層に大きなダメ-ジを与えた。いわば、災害が社会的弱者を直撃し、これらの人々の住を中心とする生活再建は、困難をきわめている。従来から、自然災害後の被災者の生活再建は「自立復興」が原則だとされてきたが、阪神・淡路大震災を契機に、そうした政策原則や災害対策の枠組みそのものの再検討が必要とされている。 2.被災前から住民による「まちづくり活動」が長く続けられていたり、住民組織の活動が活発に展開されていた地域では、被災後の対応が概して迅速に行われ、住宅の共同化や街区の再建をめぐる協議とプランづくりが進行している。 3.被災直後に、地域のリーダーが救援物資を十分に確保できなかったり、いちはやく疎開し地域から離脱したところでは、彼らのポジションの正当性が失われ、リーダー層の世代交代が起こるなど、災害を契機に地域住民組織の再編が進行していくケースも見られる。 なお、被災住民の生活再建と地域社会の復興プロセスは、なお緒についたばかりであり、今後継続して、こうしたプロセスの実態調査とその結果の分析を実施していくことが課題である。
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