1996 Fiscal Year Annual Research Report
「中国帰国者」をめぐる地域社会の受容と排除に関する比較社会学的研究
Project/Area Number |
07610184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蘭 信三 京都大学, 留学生センター, 助教授 (30159503)
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Keywords | 中国帰国者 / マイノリティ / アイデンティティ / 受容と排除 |
Research Abstract |
本年度の調査の結果、中国から帰国したひとたち(中国帰国者)の日本社会での受け入れは、地域によってかなりの偏差があることがわかった。中国帰国者の受け入れは、行政と地域社会そして地域住民の3レベルがある。(1)行政における受け入れは、国、各都道府県、市町村の3段階が関わっているが、国による受け入れは、ほぼ一律であるが、自立促進センターが全都道府県に設置されているわけでないために、その有無による相違が存在する。定着促進センターでの学習期間が十分でないだけに、この自立促進センターの有無は日本社会への中国帰国者の適応に違いをもたらす。都道府県行政レベルでの受け入れも、国の基準で行われておりその違いはほとんど見られないが、公立高等学校への特別入学制度の有無が大きな違いを示す。(2)地域社会での受け入れは、行政だけでなく地域社会と密接に関わっており、行政、社会福祉協議会や日中友好協会などの団体そしてボランティアの組み合わせによって異なっている。例えば、その3者が密接に連携しうまく機能している地域と、各々が連携をとらずに独立的に活動している地域とである。受け入れのポイントは、社協などの団体とボランティアであることは言うまでもない。(3)実際の受け入れの際に大きな役割を果たしているのは、行政委託の自立指導員とボランティアである。彼らは、帰国者の実際の生活の場面で生じる生活課題を一つ一つ解決するなくては成らない存在であるが、帰国者への対応の論理によって大きなタイプの違いが見られる。ひとつ(同化指向)は、日本社会で自立するためには出来るだけ中国的な側面をなくし「立派な日本人になる」ことを期待するタイプであり、もうひとつ(共生指向)は、中国での価値観や生活習慣を尊重し、「手段としての日本語・日本的習慣の習得」によって自立を目指すことを期待するタイプである。次年度は、(2)と(3)を変数として数地域でのシステムを掘り下げたい。
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Research Products
(1 results)