1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610187
|
Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
加登田 恵子 山口県立大学, 社会福祉学部, 助教授 (30139365)
|
Keywords | 口承史 / ライフヒストリー / 実践評価 / 児童福祉 |
Research Abstract |
本研究の長期的課題は、口承史学の手法をふまえ、当事者としての子どもの視点から、児童福祉処遇の歴史を再構築することである。 今回はその第一段階として、口承史の手法が社会福祉実践にかんする利用者側からの評価(evaluation)としての有効性をもつか否かの理論的吟味を行うとともに、昭和戦前期を中心とする時代の、福祉施設利用者の生活記録の収集ならびに、当時に児童福祉施設出身者の〈聞き取り〉調査による資料収集と分析を行った。 具体的な聞き取り作業は、我が国有数の歴史を誇る某児童養護施設に大正年間に在院した人々4人(4ケース)について行われた。被調査者を選定するにあたっては、戦前の施設生活体験者の多くが高齢化していることから困難を極めたが、幸いにもかなり特殊な条件とはいえ、秀逸な人材とめぐりあることができた。延べ10時間以上の1次調査がなされ、また、当該施設関係資料の保存が良好なことから、傍証資料もかためつつある。 今回のライフヒストリーの聞き取りとその再構成する過程で、福祉施設体験がそれぞれの個人の人生に及ぼす影響として、1)かなり抽象的ともいえる福祉実践者(メインとなる人物)の思想的(宗教)側面影響力の深さ、2)情緒的体験の質の個人差、3)ライフスタイル形成への影響、4)男女あるいは生活経験の社会的広がりによる被差別体験の相違、その他等多くの要素が考察された。 さらに〈全体性〉を意識すると、まさに戦前期における日本の農村社会状況の反映もまた顕著であったといえる。語られた人生は、まさに生き抜いた人生としての重みを有していた。
|