1996 Fiscal Year Annual Research Report
社会階層分析にもとづく住民の地域社会参加度の地域間比較研究
Project/Area Number |
07610189
|
Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
文屋 俊子 福岡県立大学, 人間社会学部, 助教授 (20254641)
|
Keywords | 階層 / 地域社会 / 参加 / 旧産炭地域 / 地域共同体 / コミュニティ |
Research Abstract |
地域社会における問題や課題に対する住民の取り組みや関心のありかたに、階層構造の地域間の差異がどう影響するか、それをあきらかにすることが、この研究の目的である。平成7〜8年度を通じ、福岡を中心に数地区の事例研究をした後、福岡市の開発地区隣接地域と田川市全域を対象地区として、質問紙法による面接調査を実施した。 階層意識は、地域によって差異がある。田川市は、旧産炭地域として、保護率の高さなど、特殊性が強調される地域であるが、個人の職業や収入面で他地域と大きな開きはない。しかし、意識において中の下以下と考える割合は高く、これは諸個人の地域全体の下層イメージを反映している。福岡市の地区の場合、地域に上層イメージがあるのと対照的である。田川市の階層意識は、職業、収入、学歴などをよく反映しており、日本のいわゆる中流意識のありかたとは異なるといえる。 地域社会に対する関心や参加意志は、いわゆる中流意識をもつ階層に低く、下層に高い。田川市では中層は地域の上層であり、この階層に地域関心が薄い。階層によるセグリゲーションが伝統的に進んだ地域で、全体として具体的な地域課題に中層が接っするチャンスは少ない。階層意識にかかわりなく、伝統的な地域共同体意識は、田川市ではまだ強い。下層の地域参加意志の高さは、半分はこのためである。 地域共同体意識は、人の和を意識するあまり、地域住民間の利害関係問題へのかかわりを避ける傾向がある。とくに階層構造の地域差との関連で、いくつかの仮説が成り立つ。地方小都市には、大都市域の問題とは異なる地域問題の構造があるといえる。これが特殊な問題でなく、地方小都市に共通の問題であるかどうかは、さらに比較研究の必要がある。
|