1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610193
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
竹内 彰啓 東北学院大学, 教養学部, 助教授 (20125602)
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Keywords | 中高年男性 / 余暇活動 / 男の料理言説 / ジンダー / ネットワーキング |
Research Abstract |
中高年層の男性の余暇活動グループとして比較的歴史のある男性を中心とした食文化と料理のグループである「男子厨房に入ろう会」(以下「男厨会」)を典型事例として取り上げた。その活動グループの内、特に活発な仙台と東京を中心に事例調査を行った。この会の活動の経緯を戦後日本の時代背景の脈絡に置き考察した。次の知見を見いだした。 1.男厨会は、1977年東京でジャーナリストの中村勝彦が著した『男子厨房に入れ!女の台所術を告発する』に賛同する人々によって結成された。彼らの活動は、1960年代の高度経済成長を経て日本人の食生活が大きく変化する時期と対応している。インスタント食品、冷凍食品の登場、外食産業の発展と相まって、より豊かな食生活への関心が高まった時期であった。余暇時間が増える中で男性による料理や食を媒介にした仲間の集まりの基盤ができつつあった。 2.1970年代は、料理情報が広く氾濫する端緒の時期であった。主婦の料理とは一味違う「男の料理」の言説が生まれ、わが国独自の世界を作った。男性を主な読者にした「男の料理」本が数多く出版に如実に示されている。 3.料理についての社会的性別役割(ジェンダー)の中で、「男の料理」言説は、男性が料理を嗜む機会を開くのに貢献した。 4主に男性を中心とした余暇活動のグループの形成は、日本のジェンダー化された関係形成の枠組みの中に組み込まれたものである。男厨会は、都市における中高年男性のグループ形成のそうした典型例である。 5.二十年に及ぶ男厨会の活動は、人と人の連なりを基礎にネットワーキングのそのものである。創設の核となるメンバーは少なからず変化を示したものの、基本的にはそのまま持ち上がってきている。新規参加メンバーに高齢者が多く会のメンバーの高齢化が最近の目だった傾向である。高齢者の生活の自律の一つとして料理への関心の高まりに新たな展開を垣間見せている。
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