1996 Fiscal Year Annual Research Report
東京における外国人自営業者層の形成と地域社会の変容
Project/Area Number |
07610194
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Research Institution | SHUKUTOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田嶋 淳子 淑徳大学, 社会学部, 助教授 (20255152)
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Keywords | 都市 / 外国人 / 自営業 |
Research Abstract |
1.今年度は、第一に東京(豊島区池袋地区、新宿区大久保地区)の外国人自営業者、宗教施設への補足的な調査および池袋を中心として外延的拡大傾向をみせる他地域の自営業者調査を実施した。第二に、大阪市のニューカマ-ズ関連宗教施設調査ならびに在日韓国人自営業者団体への調査を実施した。第三に、自営業者層および企業在職者等が設立したボランティア組織に関する調査を実施した。これらの調査から以下の点が明らかとなった。 (1)外国人自営業者は店舗、配達圏のみならず、宅配による全国規模の販売網をもつ。他方の外国人居住者の中にはその周囲に独自の小売り網を持つ場合もあり、商品流通ルートはツリー状に広がる。こうした広範な営業関係が東京の外国人自営業者層の形成を支える。 (2)同一地域における同一エスニック対象の店舗展開には一定の限界があり、地域的な分散傾向を促す。また、競争関係の激しさから、エスニックの境界を越えて自営業を展開するケースや従業員に多様なエスニック構成をとる傾向がみられる。 (3)業種に関して、サービス業と小売り業等の組み合わせによる多角化が図られている。 (4)大阪では、韓国系ニューカマ-ズについて主に宗教関連施設を核とするネットワーク形成が進み、在日韓国人の関与がみられる。しかし、他のエスニックに関しては規模が小さく、自営業者層の形成もいまだ初歩的段階である。震災を契機とする多言語ミニFM局の開設、衛星放送への取り組み等狭域、広域両面でメディア化への取り組みが見られた。 (5)宗教関連の接点を持たない中国系の場合、自営業者層および企業在職者を中心として、同郷、同窓を核とするネットワークの自発的な組織化が進む。団体数はすでに百を越える。 2.以上の結果から、東京の外国人自営業者層の形成は当該地域のみならず、全国規模のネットワークを背景とし、今後の展開はさらなる地域社会の変容をもたらすものと言える。
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