明治期貧困問題と社会事業施設の比較検討ー石川県と東京府市ー

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07610220
• Research Institution: Kyoei Gakuen Junior College
• Principal Investigator: 山田 明 共栄学園短期大学, 社会福祉学科, 教授 (40174700)
• Keywords: 明治期貧困問題 / 救貧院 / 社会事業の近代化 / 日露戦後の地方経営

Research Abstract

明治維新後の社会混乱は社会各層の貧困化をもたらし、その対策として各地方で種々の救貧対策がとられた。とくに大都市では規模の大きい貧民収容所が作られたが、永続したのは東京、大阪、金沢などいくつかに限られた。京都府や神奈川県などは維新後の混乱期のみで終息し、継続しえなかった。
東京の場合は東京市養育院として行政責任のもとで運営され、安達憲忠、田中太郎らのよき運営者を得て、社会事業の近代化と公費負担の増減も含めた行政責任体制を追求しえた。しかし石川県金沢市の小野慈善院は小野太三郎と一部慈善家の協力で辛うじて運営できるレベルで、社会事業の近代化を追求できる条件をもてないまま混乱の度をつよめ、地元新聞社の世論形成と日露戦後の地方経営方針のもとで行政責任が明治期末年に何とか実行できることとなった。しかしそこには社会事業の科学化を進める実践の蓄積はなかった。
内務省主導による救済事業の近代化は日露戦後の社会経営として進められるが、そこには廃兵や軍人遺家族の貧困化があった。明治末期はこうした諸問題を社会救済策としてまとめあげる時期だったとみることができる。

Research Products

• [Publications] 山田 明: "小野太三郎と横山源之助" 共栄学園短期大学研究紀要. 12号. 235-254 (1986)
• [Publications] 山田 明: "日露戦争時の廃兵の生活困窮と援護計画" 日本福祉教育専門学校研究紀要. 4巻2号. 77-106 (1985)
• [Publications] 山田 明: "日露戦争時帰郷廃兵の生活と地域援護" 日本福祉教育専門学校研究紀要. 5巻1号. 101-127 (1986)
• [Publications] 山室軍平、山田 明: "戦前期社会事業基本文献集22 社会時事業家の要性" 日本図書センター, 280(28) (1985)
• [Publications] 辻村泰男、山田 明: "戦前期社会事業基本文献集58 傷庚軍人労務輔導" 日本図書センター, 390(55) (1997)