1995 Fiscal Year Annual Research Report
現代義務教育のオールタナティヴとしての基礎的教育の普遍化に関する研究-インドの事例をもとに-
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07610238
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
渋谷 英章 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (50183398)
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Keywords | 初等教育 / ノンフォーマル教育 / 義務教育 / インド / 教育政策 |
Research Abstract |
独立以後のインドの義務教育政策の展開を、基礎的教育普遍化の原則という観点から分析し、次の諸点が明らかとなった。(1)独立後の国民教育制度としてのマハトマ・ガンディーによって提唱されたベイシック・エデュケイションは、西欧近代モデルの学校教育を鋭く批判し、インド独自の義務教育の確立を試みたものとして高く評価できるが、植民地時代に成立した中等学校制度を並存したままで、7年間のフルタイムの初等学校というシステムを採用していたがゆえに、大衆からもまた上流階級からも支持を得ることができなかった。(2)1960年代には、カラチ・プランの「普遍的初等義務教育」という概念にもとづいてインドの初等教育政策は展開されたが、この理念はフルタイムの学校教育を原則とした欧米型の義務教育を「発展途上国」においても実現しようとする試みという性格が強く、非就学児童に対する基礎的教育の保障に関する根本的問題の解決には結びつかなかった。(3)1970年代後半には「ノンフォーマル教育センター」の設置・普及が連邦教育計画の中心的課題のひとつとされた。この「ノンフォーマル教育センター」は、60年代の学校教育による「普遍的初等義務教育」の実現のための現実的補完措置とも位置づけられるが、それと同時にパート・タイムによる基礎的教育の提供というシステムが、旧来の学校教育のオールタナティヴとしての可能性を示している。 また、このインドの初等教育政策の分析と並行して、ユネスコや世界銀行などの国際機関の基礎的教育普及戦略の変遷を検討した。その結果、画一的な学校に代わって地域の実情や住民の必要に応じた教育機会を提供する「ノンフォーマル教育センター」が70年代に導入されたことは、この時期の西欧型近代化モデルからベイシック・ヒューマン・ニーズ・アプローチへという、開発パラダイムの転換に呼応していることが明らかとなった。
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