1996 Fiscal Year Annual Research Report
平和記念館による戦争体験継承の過程および今後の役割の比較・社会学的研究
Project/Area Number |
07610253
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 登司文 京都教育大学, 教育学部, 助教授 (50166253)
|
Keywords | 平和教育 / 平和博物館 / 戦争体験 / 平和意識 / 集合的記憶 / 戦争博物館 / 比較教育社会学 / 平和記念館 |
Research Abstract |
平成8年度の研究において、(1)平和記念館の比較・歴史社会学的考察により、戦後50年間における平和記念館の歴史的変遷を分析し、平和記念館の発展過程が明らかになった。(2)平和記念館の国際比較については、外国の平和記念館についての文献資料や、平和記念館が発行する資料や入館者へのパンフレットにより、各国の平和記念館の理念と実態を比較し、平和記念館の類型モデルを得た。(3)東京・京都・広島・那覇の各都市の中学生に対して、平和に関する意識調査を行った(1997.2-3)。これは、地域・国・世界へと興味や関心が広がる発達段階にある中学生に対し、平和についての意識と近隣アジアについてのイメージをを明らかにし、さらに各平和記念館への入館が中学生の平和意識に及ぼす影響を調べ、平和記念館の教育的効果を明らかにするものである。 平和記念館の歴史的分析により、国内の平和記念館は、(a)集団体験(多くは戦争体験)、(b)準備期、(c)開館、(d)転換期などの各段階を通ることがわかった。平和記念館の比較分析により、各地の平和記念館が、被爆、空襲、抑留、引き揚げ、特攻などそれぞれの地域の戦争体験と関わっており、さらに1980年代以降の「(d)転換期」においては戦争の歴史認識や平和学の発展とも密接に関わっていることが明らかになった。平和記念館の国際比較により、国外の平和記念館のタイプは大きくホロコーストの記録、抵抗体験の継承、積極的平和の実現などの展開テーマを持つことが示された。中学生に対する質問紙調査については、入館した平和記念館に対する評価と平和に関する意識を分析する。平和記念館への中学生入館者が示す態度を調べ、平和記念館のタイプや地域により比較対照する。中学生が現在の世界状況をどう認識し今後の平和に何が必要と思っているかを明らかにすることにより、平和博物館が今後果たすべき役割や課題を明らかにする。
|