Research Abstract |
本研究は,1949(昭和24)年に制定された教育職員免許法の成立過程を,特に免許法の理念とされる教職の専門性確保という問題について,その内実を形成する具体的な教師養成教育の内容やその背後にある教職観,教員養成観等について,免許法ならびに教師養成教育の内容形成に関わった日米双方の関連資料の収集,分析という方法から取り組んでいる。本年度は,主として日本側の動向分析を,(1)「戦後教育資料」(国立教育研究所所蔵),「春山順之輔文書」(私学教育研究所所蔵)における教育職員免許法関連資料の収集・分析,(2)「玖村敏雄文書」(山口県立図書館所蔵)における「学科過程案の研究について」の師範学校の回答文書の収集・分析,(3)関連大学・学部でのカリキュラムの実態分析,という3点から実施した。その結果,教育職員免許制定以前に,師範学校は独自の教員養成制度並びにカリキュラム研究に着手し,その基本原理として,(1)制度的には,6・3・3に続く4年制の「単科大学としての教育大学」,(2)教員養成の対象は,小・中学校教員を一緒に養成する,(3)カリキュラム内容では,一般教養,教科専門,教職専門の3本建て。特に,「人間性の育成」という観点に立った一般教養の重視や教職教養の内容的転換を強調,(4)履修方法としては,1〜2年次に一般教養,3〜4年次に教科専門,1〜4年次を通して教職教養という構造,(5)理念としては「実践から理論へ」という帰納的方法,を構想していたことが明らかになった。なお,教育職員免許法(案)に関する日本側資料については,上記(1)の関連資料の分析から1947年段階の法案の存在が確認されたが,そこには具体的な教師養成教育の内容規定はみられず,その後の立案過程の分析が必要であることが明らかになった。平成8年度は,こうした日本側の資料収集に加え,アメリカ側の資料としてCIE文書の収集並びにその分析を進めいていく予定である。
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