1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610282
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Research Institution | GIFU KEIZAI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三羽 光彦 岐阜経済大学, 経済学部, 教授 (90183392)
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Keywords | 実業補習学校 / 地域産業 / 産業教育 / 徒弟制 / 伝統工業 / 中等教育 / 地域社会 / 産業組合 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続いて、主に、二つの分野において調査・研究を行なった。第一は、両大戦間期の都市部の実業補習学校の改革論に関する調査・研究であり、第二が、1893年の実業補習学校規程成立以前に存在した実業補習学校に類似した諸学校の実態についての考察である。 前者の研究では、戦間期において、東京市などで都市教育の計画が実施された。そのなかで、都市特有の市民の教育要求を実現する教育機関として実業補習学校が注目されたことを明らかにした。たとえば、東京市政調査会の川本宇之介は、日本では実業補習学校が都市部において不振であることを指摘し、実業補習学校教科課程の柔軟な改革、女子実業補習学校の拡充、市民の教育教育要求にもとづく実業補習学校の整備・充実などを提案している。こうした構想は、後に東京市などで一部実現している。この研究成果の一部は、「戦間期日本の都市教育行政に関する一考察」『岐阜経済大学論集』第31巻第1号(1997年6月)のなかで発表した。 後者の研究では、近代日本における実業補習学校の源流は、1870年代に設置された東京府の商業夜学校や大阪府の女子手芸学校に求めることができること、近代公教育生成過程においては、普通教育ではない定時制の実業教育が、商人や職人層の徒弟教育の機能と連携あるいは吸収・代替しながら重要な役割を担っていたことなどを明らかにすることができた。成立期の実業補習学校は、こうした徒弟教育と近代公教育との結節点としての位置によって、その機能と性格が規定されていたといえる。この点の研究結果は学会誌等に今後発表予定である。 以上の研究成果については、当該研究成果報告書(1998年3月31日)所収の論文「実業補習補習学校史の諸相」において論じた。
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