1997 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄のフォーク・ヒストリー(野史)に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
07610309
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
笠原 政治 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (70130747)
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Keywords | フォーク・ヒストリー / 沖縄研究 / カツオ漁 / 南方出漁 / 外来祖先 / 歴史伝承 |
Research Abstract |
本年度は,平成7年度,8年度に実施した主に近代史の脈絡で語られるフォーク・ヒストリー(具体的には沖縄島東部・与勝半島一円における山原船交易や村落の共同店設立,および宮古諸島・池間島のカツオ漁業導入とそれに伴う地域社会発展の口述史)に関する調査を引き継いで,とくに宮古における戦後史の語りに主題を広げて収集・分析作業を敷衍する一方,沖縄島における琉球王国期まで溯る歴史伝承についても研究対象に取り込んだ。本年度の調査研究によって得られた新たな知見は概略以下の通りである。 1.宮古諸島の池間系諸村落には,旧慣温存期(明治30年代まで)の終了後にカツオ漁業を開始したことのほかに,昭和初期及び戦後のアメリカ統治期に華々しく行った東南アジアや南太平洋への南方出漁が,人びとの集団的アイデンティティを形成するモメントとして存在している。これは,フォーク・ヒストリーより,むしろ体験の語りに近い過去の記憶であり,改めて調査研究されるべき重要な主題である。 2.沖縄島付近では,琉球王国期に渡名喜島にやってきた流人,派遣役人を祖先と語る伝承に注目し,収集資料に基づいて外来祖先のフォーク・ヒストリーという主題を導き出した。 なお,最終年度にあたる本年度は,資料分析,地元研究者との意見交換にも努力し,成果報告書をまとめた。
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