1996 Fiscal Year Annual Research Report
米国中西部小都市における老後の扶養関係の変遷とエスニシティ
Project/Area Number |
07610313
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐野 敏行 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (20196299)
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Keywords | アメリカ社会文化 / 歴史人類学 / 家族関係 / 老後の扶養 / 高齢化社会 / エスニシティ / 老年人類学 / コミュニティ |
Research Abstract |
本研究は、米国中西部小都市とその近郊の農村部を取り上げ、ヨーロッパ系白人を対象として調査で収集した民族誌の資料に、歴史的資料を加えて分析し、19世紀半ばから現在にいたる期間の老後の扶養関係の歴史にみられる民族集団間の類似と相違を明らかにすることを目的としている。本年度は、(1)前年度にデータベース化した、研究対象地域の国勢調査の手書き原簿(1850、1860、1870、1880、1900、1910の各年)をもとに、本研究の分析道具となるエスニシティの同定を各個人の移住元の国名・地域名と出生地を参考にして行った。この作業には、同定された親のエスニシティを通して、子供のエスニシティの修正を必要とした。この修正作業は、予想に反して、当時の人々のエスニシティの複雑さを明らかにした。この意味合いは、米国のエスニシティ概念の考察に重要な問題提起をしうるものであることが分かった。(2)土地台帳と国勢調査に含まれる当該家族に関する情報をもとに、地図上に農地・居住地を記し、世代毎の変化を追った。民族誌データと照らし合わせると、家族の一員の死亡や、移動による家族関係上の変化が、そうした変化に反映していることがわかった。(3)前年度の継続として、研究対象地域の国勢調査資料を使って、1880、1900、1910の各年における60歳以上の高齢者を含む世帯の家族構成、職業、民族的特質のパターンを分析した。また、小都市内の6区あるうちの一区について、国勢調査とシティ・ディレクトリを併用して、個人の移動パターンを、1870年から1976年までの約20年おきの資料をもとに明らかにした。この区はポーランド系優位の区で、移住の波との連動で、世代間交代の波があり、1970年代では、独居の高齢者の割合が増加することがわかった。エスニシティと高齢者の扶養のあり方の歴史的変化を示唆している。
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