1997 Fiscal Year Annual Research Report
米国中西部小都市における老後の扶養関係の変遷とエスニシティ
Project/Area Number |
07610313
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Research Institution | NARA WOMEN'S UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐野 敏行 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (20196299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 眞理子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80206002)
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Keywords | アメリカ社会文化 / 19世紀の人口動態 / 移民の家族史 / 高齢化社会 / 老後の扶養 / エスニシティと民族誌 / 小都市研究 / 老年人類学 |
Research Abstract |
高齢化に対応するための基礎的情報を得るため、本研究は1850年から1985年までの米国中西部小都市と周辺農場地域2カ所の民族誌的資料と歴史的資料の分析により、エスニシティに注目しつつ、老後の扶養関係の変化を明らかにした。当該都市の人口は1850年458人、1910年8691人、1980年22,970人であった。データベース化したセンサス手書き原簿を分析した結果:(1)60歳以上人口が、当該都市で1850年から1910年の間に1.5%から9%、各々の農場地区で1860年から1910年の間に2.7%から7.5%、3.0%から10.0%に増し、この期間は東部移住者とヨーロッパ系移民の流入期であるとともに高齢者の「発見」期であったことが判明した。(2)居住家屋単位で高齢者の増大をみると、当該都市で1850年から1910年の間に8.1%から30.8%に、農場地区で1860年から1910年の間に各々11.8%から35.8%、13.6%から34.8%に増大した。1910年には都市でも農場地域でも3軒に1軒の割合で高齢者の存在が身近になった。(3)高齢者のいる家の中で生活タイプ毎の割合の変化は、当該都市で「非親族の同居人」のいる家が、1850年に66.7%から1910年に8.5%へと常に減少した。「単独居」は1860年の3.4%から1910年の9.7%に増加、「夫婦のみ」は10から20%の間で変動していた。「親子同居」は1860年から70%前後で変動していた。高齢者夫婦の場合、既婚のより未婚の子どもとの同居が圧倒的に多い。高齢母だけの場合、1900年まで既婚の娘との同居が多かったが1910年に未婚の娘との同居が上回った。高齢父だけの場合、既婚の息子との同居が多かったが、1910年に未婚の息子との同居が上回った。(4)非親族同居人はヤンキ-系で小さな割合で常にみられ、ポーランド系にはいなかった。少子化はヤンキ-系で先行し高齢者の単身・夫婦独居が増えた。多産であるポーランド系の少子化は遅れるものの、高齢者の単身・夫婦独居はヤンキ-系と同等の増加を示し、子どもが結婚時に親の家を離れ持ち家を早くから持つ慣行を反映しながら、近隣に子どもがいて扶養閑係が維持されていたと堆定できた。これらの結果は、1980年代半ばに約2年半にわたる長期民族誌的調査で得られた資料から、特定の家族に焦点を合わせ、個人史及び家族史を再構成した結果と整合していた。
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