1995 Fiscal Year Annual Research Report
国境で分断された人々の民族史研究-フィリピン南部ミンダナオ・インドネシア北部スラウェシの動態的研究-
Project/Area Number |
07610316
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
早瀬 晋三 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (20183915)
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Keywords | フィリピン / インドネシア / ミンダナオ / スラウェシ / 少数民族 / 人口動態 / 国境間移動 / 口述史料 |
Research Abstract |
フィリピン南部ミンダナオ島、ス-ル-諸島およびインドネシア北部マルク諸島、サンギヘ・タラウド諸島は、南中国海と香料諸島(マルク諸島)に挟まれた地域で、かつては交易活動が盛んな地域だった。しかし、これらの地域は、移動の激しい海洋民が多数移住する地域で、そのため歴史的資料はあまり残されず、民族分布についても不明な点が多かった。本研究では、史料の不足を補うため、これらの地域でシルシラあるいはタルシラと呼ばれる王統系譜および伝承などの口述史料をもちいて、人びとの移動と分布を考察している。とくに近年収集したミンダナオ島南岸およびサンギヘ・タラウド諸島の系譜は、フィリピン人およびインドネシア人の研究者の協力で、インドネシア語および英語への翻訳が進んでいる。来年度には、資料集の暫定版を出版する予定である。これまでに整理した系譜から、それぞれの地域の婚姻関係や移動の断片が明らかになり、その結果、スラウェシ海・北マルク海圏といえるような地域像が浮かび上がってきた。これを文献史料に基づいて、歴史的文脈のなかで把握する作業が残されているが、15世紀後半からの東南アジアの「交易の時代」、ヨーロッパ人のいう「大航海時代」、中国人のいう「南海貿易」の拡大という文脈のなかで読み取れるものと考えている。来年度は、さらに考察をすすめ、この地域が単なる辺境ではなく、また移動性のある人びとが歴史の脇役ではなく、自律した地域社会を築き、主体性をもって歴史を動かしてきたことを明らかにしたい。
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