1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610339
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
乕尾 達哉 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (30164065)
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Keywords | 公卿補任 / 山科言継 / 三条西実隆 |
Research Abstract |
本研究の目的は山科言継書写本成立に至るまでの公卿補任諸本の存在形態・成立過程を可能な限り追求・復原する点にある。本年度においては主として東京方面と関西方面の図書館・文庫所蔵の写本調査を実施し、次のような知見を得た。 1)内閣文庫所蔵公卿補任59冊本は尊経閣文庫所蔵の三条西実隆書写本と同様の「公卿伝目録」を有し、さらに同本と同じく第一冊冊尾に「歴運記」を収めること、また内容的にも三条西本とほぼ同様であることなどから、三条西本の系統をひく写本であることは確実である。但し、一部に山科本の本奥書をも有することから、三条西本と山科本との取り合わせ本ということになる。 2)内閣文庫所蔵公卿補任38冊本および京都大学付属図書館所蔵公卿補任43冊本は冊立て・奥書等からみて、いずれも山科本系統の新写本であることが判明した。 3)京都大学文学部国史研究室所蔵勧修寺家旧蔵公卿補任4冊本のうちの1冊は「公卿補任第十□本院」の外題を有し、内容上後水尾天皇代の公卿補任であり、他の3冊とは冊立てにおいて明らかに整合せず、別本としなければならない。 また、言継卿記を精査することによって、山科本成立に関する豊富な史料を収拾することができた。これによって、言継の書写事業開始は享禄2年(1529)2月、終了は永禄13年(1570)のことであることが知られたが、さらに東京大学史料編纂所所蔵の山科卿記紙背文書(騰写本)によって、実際には遅くとも大永7年(1527)3月以前には広橋兼秀らから公卿補任の写本を借り受けている事実も判明した。公卿補任開始のための準備期間がある程度存在したと見られる。
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