1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610354
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai Women's Junior College |
Principal Investigator |
森 明彦 関西女子短期大学, 保育科, 講師 (90231638)
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Keywords | 和同開珎 / 銀 / 調庸布 / 穎稲 / 無文銀銭 / 銅銭 / 銀銭 / 借銭解 |
Research Abstract |
平成7年度の研究実績は以下の三点にまとめられる。 (1)和同開珎の性格、特にその価値を規定したものが通説のように稲や布ではなく、銀であることをほぼ確実に実証しえた。平成8年正月の投稿予定であったが、成稿後、平成7年末に木簡研究会で長野県更埴市屋代遺跡から出土した木簡に論旨の一部と関連するものがあることが判明し、木簡調査の必要が生じた。平成8年3月、長野県埋蔵文化財センターのご好意により、木簡研究会で発表された分とさらにその後判明した2点の木簡を調査する事ができた。当初、論文の論旨の若干の変更の可能性を考えていたが、新出の2点の木簡からその必要ないことを確認した。屋代木簡については言及する必要があるため、投稿は近日中に予定されている報告書刊行まで待つことにした。 (2)奉写一切経の写経事業に付随して行われた借銭事業に関し、借銭解の残存のあり方、借銭の管理のあり方の分析を行った。文書内容の分析のほか、CH判による文書の全体的な把握とともにマイクロフィルムによる紙質、墨痕、汚れ、糊痕など文書の外的形態から得られる情報を通して、宝亀年間に食口帳に再利用される以前の、借銭解の保管形態の復元に務め、現存する部分に関しては一応の成案をえた。 (3)平成7年度の研究遂行中に、当初予想した以上に課題研究とそれとは別個に研究を進めていた古代の穢と祓の問題がオーバーラップするようになり、古代貨幣の起源ないし生成の問題を考える際、穢や祓の問題が重要であるとの確信を得た。なお、穢の問題に関しては補助金による研究ではないが、「古代の穢」と「古代の穢観の変質」の2稿を部落解放研究所編『部落史の再発見』(解放出版、1996年4月)としてまとめている。
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