1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610354
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Research Institution | Kansai Women's College |
Principal Investigator |
森 明彦 関西女子短期大学, 保育科, 助教授 (90231638)
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Keywords | 和同開珎 / 銭 / 調庸布 / 銀 / 穎稲 / 祓 / 罪 / 穢 |
Research Abstract |
今回の研究成果およびその成果の公表について以下の四点に要約する。 第一は和同開珎の性格についてである。従来の研究では和同開珎は物品貨幣である米・布・銀とのそれぞれの換算率を設定することによって流通手段としての機能を有するようになったと考えていた。しかしこれらの研究は誤りであり、流通手段としての和同開珎の価値を規定したものは銀のみであることを論証するとともに「続日本紀」にみえる布・穀との換算率についてその意味するところを解明した。この成果は現在学術雑誌に投稿中である。 第二は奈良朝末期の銭貨流通を考察するうえで基本的な史料となる東大寺写経所文書の基礎的な考察を行ない、初期の文書の管理形態・財源の変化についての展望を得たことである。この成果は、平成9年度の関西女子短期大学紀要に発表する。なおこの論文では、奈良朝末期の銭貨流通の実体に関する私見とは異なる像を描いた各説が成立しないことを明らかにする。 第三は貨幣の生成を宗教的な罪・祓との関わりから論じる視座を提出することである。これらの観点は戦前にはいくつかの成果がだされていたが、戦後の人類学や宗教学および法制史の研究の深まりによって書き改める必要があった。この成果は、「日本古代の社会と経済」(平成11年刊)に掲載する。 第四は、以上の研究および従前に発表していた研究を基礎として近代的貨幣論・原始貨幣論とは一線を画した古代貨幣論を提出することである。成果は「日本古代の社会と国家」(平成10年刊)に掲載する。
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[Publications] 森明彦(共著): "古代中世の社会と国家" 清文堂(未定), (1998)
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[Publications] 森明彦(共著): "古代中世の社会と経済" 塙書房(未定), (1999)