1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610358
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Research Institution | The paleological association of Japan |
Principal Investigator |
関口 力 財団法人古代學協會, 古代学研究所, 助教授 (30216527)
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Keywords | 院政 / 摂関政治 / 下級官人層 |
Research Abstract |
院政期の社会を考察するにあたり、その前提として、院政という政治体制を実現させる結果となった後期摂関時代の諸様相を検討する必要を痛感。院政社会は上皇が政治的権力を握った政治形態をいうが、その形態を実質的に支えたのは、上皇(院)の近臣と呼ばれる下級官人層の活躍による面が強く、そうした意味から、まず下級官人の実態を捉えておく必要があった。そのために「古記録にあらわれた下級官人の実態について-道長政権下を中心として-」を発表。門閥主義が固定され、「以富人為賢者」とか「人いたく正直なるまじきなり」といった考えが支配する社会にあって、出世の見込みのない官人層は、強盗、放火、詐欺、愁訴、汚職などに走らざるを得ない実態について考えることができ、こうした不満を持った階層のエネルギーこそが、院政実現の大きな原動力となったことが端的に理解できたと思える。また下級官人とはまったく異なった階層、つまり、摂関政治体制を積極的に支えた上級官人の生き方も見ておかなければ片手落ちであり、その意味から、帝王とまで呼ばれた藤原道長の側近として特異な生き方をした源俊賢を取り上げ、また同じ問題意識から、『大鏡』の時代に焦点を当て考察を試みた。 このように摂関期から院政期への過渡期である11世紀に焦点を当てることにより、より鮮明に院政期の社会を見る視点を持つことが可能になったように思えるのである。
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[Publications] 関口力: "古記録にあらわれた下級官人の実態について" 古代学研究所研究紀要. 5輯. 65-76 (1996)
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[Publications] 関口力: "源俊賢考" 林睦朗・鈴木靖民編『日本古代の国家と祭儀』(雄小閣出版). 693-709 (1997)
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[Publications] 関口力: "『大鏡』の時代" 歴史物語研究会編『歴史物語講座』第3巻(風間書房). 129-148 (1997)