1995 Fiscal Year Annual Research Report
大英帝国とオーストラリア先住民-先住民からの土地収奪と「土地所有権」論
Project/Area Number |
07610376
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
國方 敬司 山形大学, 人文学部, 教授 (70143724)
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Keywords | 大英帝国 / アボリジニ / 土地所有権 / オーストラリア / ロック |
Research Abstract |
平成7年度は,本研究の初年度として,18世紀の植民地理論および土地収奪の理論を解明することを目標とした。 1.17世紀前半のアメリカ・ピューリタン,とりわけジョン・ウィンスロップ(John Winthrop)は,アメリカへ入植する際に障碍となる先住民(アメリカ・インディアン)からの土地収奪を,ロック(John Locke)の「所有権」論を先取りする理論によって正当化した。つまり労働を加えることによって,所有権が確立するとした。 2.エドワード・ウェイクフィールド(Edward G. Wakefield)は,イギリスの過剰人口・過剰資本を海外に移転させることによって,本国の社会経済状態を好転させるとともに,植民地に理想郷を創出するという植民地理論を展開していた。その理論の適用場所は,1834年の「南オーストラリア植民地設立法案」が可決されてからはニュージーランドに変っていくが,それまではオーストラリアであり,まさにその転換点の年に,公刊されたのが"England and America"であった。その著書では、,17世紀以降の植民地活動の実態が反映されて,ウィンスロップやロックが先住民からの土地収奪を正当化するのに依拠した「労働に基づく所有」は抛棄されるのに至っている。 3.こうした植民地理論を背景に,オーストラリアへの入植が伸展し,アボリジニから土地を収奪する。その土地の権利をめぐっては,現在に至っても今日的な課題となって残っており,その解決に向かっての法的枠組として通常マボ判決と呼ばれている Mabo v. Queensland(No. 2)が1992年にHigh Courtにおいて出されて,それを受けてNative Title ACT 1993が出された。これによって,アボリジニの一定の権利が認められるようになったが,それはかつての無主地の理論を否定することを出発点にするものであった。
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