1995 Fiscal Year Annual Research Report
日露戦争前夜の日本人知識層によるヴァームベ-リの反露思想の受容について
Project/Area Number |
07610389
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
稲野 強 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (40168430)
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Keywords | 日露戦争 / 黄禍論 / 英露の覇権争い / アールミン・ヴァームベ-リ / 白鳥康吉 / 徳富蘇峰 / 牧野伸顕 / 反露主義者 |
Research Abstract |
本年度研究の主要目的のひとつは、ヴァームベ-リの主要著作の収集にあったが、それらは国立国会図書館支部の「東洋文庫」、早稲田大学図書館にかなり多く所蔵されており、その収集はほぼ完了した。収集した著作の中には2種類の彼の貴重な自伝的な著作があり、その一部はすでに日本でも紹介されてきた。だがその際の関心はもっぱら彼の中央アジア旅行家ないしは言語学者としての側面であった。この度の調査ではこの自伝の隠された部分が明らかにされ、彼の他の著作とあわせて検討することにより、政治家ないしは扇動者としての側面ばかりか、そこに至る彼の動機付けをも確認できた。また本年度は彼が投稿したヨーロッパの新聞、雑誌の記事の収集も目的のひとつであったが、自伝や他の著作にそれらの記事が数多く引用されていることが新たに明らかとなった。さらに英露が覇権争いを演じていた中央アジアに関する新聞・雑誌の彼の啓蒙的・政治的発言を分析するによって、彼が自分の中央アジアの情報を高く評価してくれた「文明化された」イギリスを支持し、ロシアの「南下政策」への批判を急速に強めていく姿勢が確認された。また彼の反露的・政治的姿勢に対する日本人の反応という本研究全体の課題に関しても資料収集の段階で一定の成果を見た。ヴァームベ-リの反露思想に共鳴したのは徳富蘇峰であった。彼と徳富との関係をより深く知る手がかりは、従来の徳富の自伝や大隈重信宛の手紙の他、新たに見つけた手紙等の分析でかなり明らかにされてきたが、他の日本人知識層へのアプローチについては資料収集、方法論とともに緒に付いたばかりで、来年度の課題にしたい。さらにロンドンの公文書館に残る「ヴァームベ-リ・ファイル」の閲覧・調査は彼のイギリス情報機関との関係を知る上で、さらに彼の日本への接近、その動機を探る意味で重要であるが、当該資料自体門外不出のために未見で、これも来年度の課題にしたい。
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