1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610391
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
姫岡 とし子 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (80206581)
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Keywords | ジェンダー / 繊維工業 / ドイツ |
Research Abstract |
3年計画の研究の初年度にあたる本年は、とくに方法論関係の研究と資料収集に力点をおいて研究を進めた。本研究では、日独におけるジェンダー文化が繊維工業の展開形態にどのような影響を及ぼしているのか、あるいは逆に社会的、経済的基盤の変化によってジェンダーの捉え方がどう変化し、それが繊維工業における労働や女性労働者の日常生活にどうあらわれているのかを1つの重点にしたいと考えている。そこで、まず日常史関連、ジェンダーの歴史学、ジェンダー論に関する多くの著作から方法論および概念の把握につとめた。 ジェンダー概念は次のようなものである。1、文化的・社会的構築であり、歴史的に変化するもの、2、定義が男女の力関係に決まってくる、3、「女」というカテゴリーで同質的に捉えるのではなく、階級、民族、地域などによって異なる。また現在の歴史研究で重要な役割を果たしつつある「言語論的転換」について学び、ディスクールがいかに現実を作っていくのかに注目することにした。こうした研究の前提となる作業を一通り終え、現在、具体例として企業内における「ジェンダー形成」の日独比較という作業に着手している。実証研究のため資料収集にかなり多くの時間を割かねばならず、ドイツ側では工場監督官の報告書を中心にジェンダー観、モラル、労働実態、自由時間の過ごし方、家族生活などに関する文献を収集した。日本側も、『職工事情』などをはじめ同様の文献を集めている。現在、収集した資料に目を通している最中であり、これを基盤として来年度の早い時期に論文の形にまとめたい。そこでは、日独の文化の違いが「労働とジェンダー」をめぐるディスクールにどうあらわれ、それがどのような現実を作っていくのか、あるいは近代化過程での共通性の方が強くあらわれるのが中心的なテーマとなる。
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