1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代化過程と労働におけるジェンダー-繊維工業を例とする日独比較社会史-
Project/Area Number |
07610391
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
姫岡 とし子 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (80206581)
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Keywords | 繊維工業 / ジェンダー / 工場法 / 比較社会史 / 工業化 / 近代化 / 工場監督官 / 女性労働 |
Research Abstract |
3年間の研究のまとめの年である本年度は、まず研究方法論について精緻化した。1、比較研究。最初に典型的な近代化モデルを設定し、これとの比較において日独を特徴づけるということはせず、ドイツと日本の文化的・社会的背景の相違に注目し、これが双方の近代化の行方にどう反映されるのか、またこれを超える近代社会の一般的趨勢が見られるのかを検証する。2、前近代と近代。近代家族や近代的ジェンダーなど近代に固有のカテゴリーを重視するが、それにより近代以前からの連続性に注目するという観点が抜け落ちないよう、日本とドイツの近代以前における社会的・文化的な相違に注目し、それが両国の近代化にどのような影響を与えるのかを検討する。3、ジェンダーの歴史学。権力関係に規定された労働のジェンダー化の進展過程を跡づける。4、言語論的転換。労働のジェンダー化をうながすディスクールを具体的に分析する。 次に日独の繊維工業において労働力の女性比率に大きな差があることに注目し、その原因を探った。ここでは、先ほどの方法論の2つの観点から、近代以前のジェンダーによる労働分担が継続されていること、その背景に農業を工業より優位だとみなす文化が存在すること、生産物の相違によって求められる技術が異なることなどを指摘した。 さらに近代家族モデルや近代的なジェンダーの成立過程を追い、それが労働のジェンダー化とどう関係しているのかを考察した。具体的には工場法の構築される過程に注目し、制定のさいのディスクールを分析した。そこで明らかになったのは、労働および身体のジェンダー化であり、これは対外的に強力で対内的には社会秩序の安定した国家建設という日独両国の目的にとって不可欠のものであった。
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