1995 Fiscal Year Annual Research Report
「イングランド宗教改革」評価の史的変遷と国民意識の形成
Project/Area Number |
07610392
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
指 昭博 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (90196197)
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Keywords | 宗教改革 / イングランド / イコノクラスム / ジョン・フォックス |
Research Abstract |
本年は初年度ということで、イングランド宗教改革の展開のなかでも、当時の社会への影響が最も大きかった修道院解散の問題を中心に研究を進めた。修道院解散は、修道院に中性以来蓄積されていた文化遺産の掠奪・没収といった、いわゆる「イコノクラスム」としての面も持っていた。 この「イコノクラスム」との関連で、宗教改革時の教会聖堂における破壊活動のなかでも、貴族・ジェントリなどの記念碑墓への攻撃に対する当時の擁護論を、とくにジョン・ウィーヴァの著作『古墓碑論』(1631年刊)での議論をたどることから考察した。それを実際の記念碑墓製作の実態と関連させることにより、当時の宗教改革理念と実際の俗人の対応との齟齬を明らかにし、神学の枠からでは捉えられない宗教改革の実態の一端を知りえた。 また、同時代の文献や資料から、こういった宗教改革時の教会の変貌に対する聖職者や好古史家の評価を、同時代の16世紀から順次跡付けていく作業も進めた。その際、とくに考察対象の中心においたのは、エリザベス時代の神学者ジョン・フォックスの著作『殉教者の書』である。この著作はその後のイギリス人の「反カトリック感情」を確立したとされるプロテスタントの立場からのイギリス宗教改革擁護の歴史書として重要なものであり、16世紀以降19世紀に至るまでのこの著作への評価の変遷はそのまま宗教改革観の変遷ともみなし得る。とくに、今年度はその諸版の出版にまつわる状況を考察することから、その流布の実態とそこで表明された宗教改革肯定の価値観の広まりの関連について考察を加えた。
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