1996 Fiscal Year Annual Research Report
歴史家エドワード・ギボンの家系史的研究-祖父エドワードを中心-
Project/Area Number |
07610393
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Research Institution | KANSAI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
芝井 敬司 関西大学, 文学部, 教授 (00144311)
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Keywords | ギボン / 歴史家 / 戦費送金 / 南海会社 / 史学史 / 文明 |
Research Abstract |
本研究は、歴史家エドワード・ギボン『自伝』に描かれた家系について、個別に事実の確定をおこなうことを目指した.この作業は、曽祖父マシューまでのギボン家の系譜の確定、曽祖父マシューの商売と軍需局との関わりの解明、祖父エドワードの生涯と商業・金融活動の概要と社会的上昇の解明、父エドワードの議員活動と議決行動の分析の四点にわたる調査を必要とするものであったが、本年度は、後二者について研究を継続し、「祖父エドワード・ギボンと戦費送金」と題する論考にまとめた。本年度の調査によって明らかになったことをこの論考を中心に述べれば以下のとおりである. 1.祖父エドワードは、マシューの死後、家業を継いだが、1710年頃からランパートやホアといった数人の商人とともにスペイン継承戦争に伴って累増する戦地への戦費送金業務に携わった。2.戦費送金業務によって、祖父は正規の手数料の他にうまみのある利得を得たが、より注目すべきはこの業務を通じて獲得された人脈と立替送金をおこなうことによって確保した担保(錫、南海会社株式など)であると思われる.3.祖父エドワードは、こうして政府の債務人となり、財産と社会的地位を獲得したのであり、「御用商人」というより、「政商」と呼ぶにふさわしい。4.こうして形成された資産と人脈がジェントルマン歴史家たるギボンの誕生を可能にしたばかりか、商業の役割にたいして高い評価を下し、ヨーロッパ近代文明社会の将来にたいして楽観的な歴史家ギボンの思想形成に少なからぬ影響を及ぼした.
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