1995 Fiscal Year Annual Research Report
近代イギリス・ジェントルマン社会における家族の史的研究
Project/Area Number |
07610398
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane International College |
Principal Investigator |
渡辺 有二 島根県立国際短期大学, 国際文化学科, 教授 (80132447)
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Keywords | 近代イギリス / ジェントルマン / パタ-ナリズム / 社会移動 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、都市と地方のジェントルマン社会における家族・親族の様相、各階層相互間の結婚と社会移動、家父長制、パタ-ナリズム等の問題を検討するため、欧米の研究成果も吸収しながら、当該時期における家族の実態に関する研究の深化をはかった。従来、地主と商人は結婚などを媒介として強固な結びつきをもち、ジェントルマン支配体制を形成したとされていたが、両者の結婚比率自体は低く、18世紀初頭の11%から1750年以後減少し、1800年には3%に落ち、19世紀にはさらに急減する。一方、1694年〜1714年の間の市参事会員の82%はロンドン出身の女性と結婚しており、このことは都市エリートの間の強固な親族関係を生み、都市の上層部における新たな同質性を強め、都市化した地主ジェントルマンとともに独特の社会文化的環境を形成していく。地方においては、18世紀初期までは地主が所領を直接経営し、民衆をパタ-ナルな関係の下に支配していたが、農業の資本主義化にともない、地主の家父長的支配は崩壊しつつあった。またジェントルマンの都市化に伴い、地方行政においても、特に治安判事の職が教区ジェントリや牧師など、より下位の家族の手に渡るようになり、パタ-ナリズムの喪失がさらに進行するが、フランス革命や下からの社会的脅威に直面し、19世紀にはジェントルマンが地方行政に復帰する。ともあれ、上述した名誉革命体制期における地主のレントナー化は、農村や都市の家族構造をも変え、近代的家族の成立、早婚化、人口増加を生みだしていくのである。こうして初年度の研究においては、家族とパタ-ナリズムの問題を広い視座に立って検討するため、ジェントルマン支配、都市と農村、階層間の文化的社会的統合と乖離等の側面からの分析も加えた。
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