1996 Fiscal Year Annual Research Report
近代イギリス・ジェントルマン社会における家族の史的研究
Project/Area Number |
07610398
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane International College |
Principal Investigator |
渡辺 有二 島根県立国際短期大学, 国際文化学科, 教授 (80132447)
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Keywords | 近代イギリス / スコットランド / 家族 / クラン |
Research Abstract |
本年度の研究においては、結婚法改革に至る結婚に関する親の拒否権をはじめとする論議を、当時の家族の実態との関連において分析するとともに、イングランドとスコットランドの家族・結婚制度の比較研究を進めた。18世紀のスコットランド低地地方では、西欧と同じく20代半ばに結婚したが、高地地方や島嶼部では、結婚パターンは南欧・東欧に近く、女性の初婚年齢は10代の後半で出生率も高かった。スコットランドでは一般的に結婚は当事者相互の同意に基づき、この点では1753年のハードウィック法までのイングランドと同様だった。見合い結婚は貴族や王族に限られていたが、高地地方では親族結合や領主の力が強く、クラン相互の結婚は親族・家族が決定した。初等学校や慈善学校では男子が女子よりも多く、男子が英語とゲ-ル語を話せたのに対し、女子は英語が話せず文化的溝が広がった。スコットランドでは女性は結婚後も父親の姓を維持し、夫婦別姓がみられたが、中流階級の間では夫婦同姓の習慣が17世紀後半に始まり、18世紀後半までに一般的になった。1707年の合併以降、貴族の大部分は大ジェントリとともに、ロンドンに本拠を置き、スコットランドの所領経営を低位の地主に任せるという、イングランドと同じ傾向が見られるようになった。英蘇双方のエリートの接近は急速に進み、相互の結婚も増加した。こうして本年度の研究においては、スコットランドとイングランドの家族、女性の従属と独立、家父長制、パタ-ナリズムの変容、文化的ヘゲモニ-、支配と文化等々の諸問題を、ストーンの情愛的家族やオープン・エリート論を念頭に置きながら再検討すると同時に、欧米の家族史研究や女性史研究の成果を吸収しながら、当該時期における英蘇双方の家族の実態に関する研究の深化をはかった。
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Research Products
(1 results)