1996 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代政治史の考古学的研究 -国際的契機に着目して-
Project/Area Number |
07610402
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 伸哉 大阪大学, 文学部, 助教授 (50189958)
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Keywords | 古墳時代 / 三角縁神獣鏡 / 首長墓系譜 / 筒型銅器 / 巴形銅器 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の研究の第2年目であった。おもな作業は、古墳時代前期〜中期の首長墓から副葬品として出土する威信財の資料収集と型式学的分析であった。特に今年度に中心的に取り扱った資料として三角縁神獣鏡を中心とする前期古墳の鏡、前期末から中期にかけての主要古墳から出土する筒型銅器、巴形銅器、鉄製甲冑などである。このうち三角縁神獣鏡については、中国において出土している関連資料の調査を行い、現時点での新たな編年を行い、その成果を論文として発表した。また、筒型銅器、巴形銅器、甲冑については、資料集成をほぼ終え、出土古墳の分析の段階に入った。今年度はじめに掲げた首長墓系譜の変遷と上記副葬品の組み合わせ関係の変化についての相関を探るケーススタディとしては、近江地域の前期〜中期の首長墓の構造や副葬品の組み合わせを検討し、前期後半から前期末にかけてそれらが劇的に変化することをあきらかにし、それが畿内政権内部での主導権を握る勢力の交替と密接に関わっているという見方を提示した。 本年度までの研究によって、古墳時代の政治史を考えるためには、古墳時代前期後半の時期にそれまでの首長墓系譜を断ち切る形で出現してくる大型古墳に特に注目する必要があることが明確になりつつある。こうした古墳は従来の研究においては前期古墳という範疇の中でひとくくりにしてとらえられていた存在であるが、これらの中にじつは前期から中期への政治的大変動を担った新興首長が含まれていることをさらに副葬品の点から明らかにしていく必要がある。そして、この新興勢力とは朝鮮半島南部の勢力と太い交渉のパイプを有したいわば国際派の勢力であったと想定している。最終年度となる次年度は、こうした資料分析にもとづいて、東アジアの国際情勢と関連づけて、倭国の古墳時代の展開を見通す枠組みを提示したい。
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[Publications] 福永伸哉: "舶載三角縁神獣鏡の製作年代" 待兼山論叢. 30号. 1-22 (1996)
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[Publications] 福永伸哉(共編著): "雪野山古墳の研究" 滋賀県八日市市教育委員会, 746 (1996)