1997 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代政治史の考古学的研究-国際的契機に着目して-
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07610402
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 伸哉 大阪大学, 文学部, 助教授 (50189958)
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Keywords | 三角縁神獣鏡 / 筒形銅器 / 巴形銅器 / 初期大和政権 / 河内政権 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の研究の最終年度であり、これまでの2年間にわたって収集した資料の分析を行い、成果報告書をまとめることが中心的な作業であった。若干の補足的資料調査を行って、作成した成果報告書の大要は以下の通りである。 本研究は、日本の古墳に副葬された主要な威信財である青銅器の型式学的、分布論的考察によって、それらを製作、配布した古墳時代の中央政権がどのような推移をたどったかを明らかにすることを目的としている。主な資料操作として、三角縁神獣鏡、筒形銅器、巴形銅器の型式学的変化や分布の推移を検討し、その歴史的意味を考察した。 その結果、大和勢力が権威のシンボルとした中国製の三角縁神獣鏡が4世紀後葉を境に急速に衰退するのに対して、これと入れ替わるように、河内勢力の権威のシンボルと考えられる筒形銅器、巴形銅器-これらは最近朝鮮半島南部の首長墓からも発見例が増えてきた-が急増する事がわかった。このことは列島の政治的主導権は4世紀後半を境に、中国華北王朝との交渉を基盤とした大和勢力から朝鮮半島勢力との交渉を基盤とした河内勢力へと移動したことを示していると考えられる。そして、この中央政権内での勢力図の交替は、列島各地の系列首長の交替をも含むいわば全国的な政界再編であったと位置づけた。 こうした列島の古墳時代政治史の変動の背景には、西暦316年の中国華北王朝(西晋)の滅亡、それに続く朝鮮半島における国家形成の進展という歴史展開が考えられる。古代東アジア世界においては、中国という大国の歴史的動向が周辺諸国の国家形成のありかたをつよく規定したのである。
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[Publications] 福永伸哉: "景初三年銘鏡と東アジア" 『古代出雲文化展』島根県. 124-127 (1997)
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[Publications] 福永伸哉(共著): "古代国家はこうして生まれた" 角川書店, 275 (1998)