1995 Fiscal Year Annual Research Report
日本語史研究資料としての地方語文献の発掘とその調査研究
Project/Area Number |
07610421
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
迫野 虔徳 九州大学, 文学部, 教授 (60039972)
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Keywords | 方言史 / 地方語文献 |
Research Abstract |
日本語の歴史研究は、これまで、古い時代には、奈良、京都、近世中期以降は、江戸、東京語を中心に記述されて、その他の地方についは言及されることが少ない。資料的な偏りからやむをえない部分もあるが、その他の地方語についての記述がまったく残されていないというわけではない。京都、江戸などのその時代の中央語(政治、文化の中心地の栄光を負った言語)以外の言語を地方語と呼ぶとすると、この地方語を記述した文献は、古代から相当数見出される。地方語の実態をこれによって明らかにするほど量的に豊かなわけではないが、断片的にしろ、それ自体日本語の記述に幅を与えることになる。そして、中央語と対比して、中央語と地方語との違いを通して、あらためて中央語の現象の意味を問い直すという事も少なくない。中央語史の深化、現代の方言との関連など、地方語を記述した文献(地方語文献)を通して開拓していく部分は少なくない。このような考えから平成7年度は、地方語文献の発掘、収集につとめた。その結果、地方語文献第1種(地方語を記述した文献)を相当数発掘することができた。伊勢浜荻、日本語俗言解、陸奥方言、倭国方言録、諸国方言動植物名彙(橋本)などは、量的にも多く、これまであまり知られていなかった資料である。このうちの日本語俗言解は、近江に生まれた江戸に住んだ著者が実体験を通して日本語の東西方言を対比しており貴重である。成立は物類称呼に先行する。簡単な報告を筑紫語学研究最新号に寄せた。 地方語文献第2種(地方出身の著者の言語が文章中に反映しているもの)は、文脈が与えられており、利用価値が高いが、洞門抄物の一部を見出したくらいで、まだこの方面の探査は十分進んでいない。個人所蔵のものなど、所在の目星はつきながら二の足を踏んでいるところも一、二ある。平成八年度は、この第2種に中心を置きながら、資料の収集に努めるつまりである。
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