1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610429
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
今井 正之助 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (70112365)
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Keywords | 太平記評判書 / 理尽鈔 / 無極鈔 / 兵書 / 兵法 / 軍配思想 / 義貞軍記 / 林羅山 |
Research Abstract |
本年度は、和漢の兵書の内、一巻之書・訓閲集等室町期以前の古兵法書および和訳を伴う『七書』注釈書を中心として調査・資料収集を行なった。七書については流布・影響度を考慮し、三略・六韜・孫子に絞った。直接調査の対象としたのは、内閣文庫・東大国語研究室・同総合図書館・尊経閣文庫・蓬左文庫・岐阜市立図書館・金沢市立玉川図書館・彦根城博物館・京大清家文庫・岡山大学池田文庫等であり、他に東北大学(狩野文庫)・国文学研究資料館に文献複写の依頼を行なった。兵書は「軍書」「兵学の書」等とのみ記されているものが多く、内容の判別が容易ではないが、それらの調査を通じて、治国為政を主眼とする近世兵学の登場の後も室町期以来のいわゆる軍配思想(兵法)が命脈を保ち続けていたことが実感された。今回の課題の前提として、太平記評判書を代表する『理尽鈔』と『無極鈔』とが、正成像の設定を中心とする対照的な性格をもっていることを指摘したが、両者には軍配思想やそれに関わる出陣作法等諸々の武家故実に対する関心・評価のあり方に及んで相違のあることが判明してきた。このことは理尽鈔の登場の近世兵学全体へ影響のあり方、また理尽鈔に対抗するかのように無極鈔があらわれたことの意味をより広い視野から再検討する上で重要な論点となるものと思われる。この点に関わる意味でも、いまだ未確定の両者の成立時期を限定する作業の進展がはかられなくてはならないが、無極鈔の引用書のひとつである義貞軍記が手がかりとなることが明らかとなり、現在義貞軍記の伝本研究を進めている。また、無極鈔には七書を中心とする漢籍兵書の直接的引用とその注解がみられるが、同時期もしくはこれに先行すると目される林羅山著作の兵書との比較検討を進めている。なお、この副産物として羅山著作の和漢軍談・七書和漢解評判・七書評判の生成過程の概要が判明した。
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