1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610447
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
戸崎 哲彦 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (40183876)
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Keywords | 柳宗元集二十巻本 / 永州山水游記 / 抱擁的山水空間構造 / 非都市空間的自然 / 円形的自然空間 / 元結 / 善和里 / 長安県豊楽郷 |
Research Abstract |
1、『柳宗元集』巻二九「山水記」を多くの版本に拠って校勘した。(1)多くの文字の異同を正し定本を示した。(2)内閣文庫蔵の二十巻本・莫睿本、京都大学文学部蔵の呂図南本、台湾・国立中央図書館蔵の鄭定本が貴重であることを発見した。2、山水文学の研究において新しい方法を示した。(1)膨大な方志を中心とする歴史地理書の活用。(2)対象の山水空間に臨んで検証・照合するフィールドワーク。(3)これらとの伝統的訓詰学的方法との融合。この方法によって以下の知見等の成果を得た。3、文人が親しみ、表現した山水空間を類型化することができる。(1)非都市空間的自然と都市空間的自然。(2)円形的自然空間と方形的自然空間。4、代表的な山水文学家の作品の比較によってその山水表現と山水空間に特徴があることが明らかになった。(1)柳宗元は記体を用い、元結は銘体を用いる。(2)柳宗元は閉鎖空間の抱擁性を求め、元結は開放空間の解放性を求める。5、柳宗元にとっての山水の“美"の正体を構造的に明らかにした。(1)北方人にとって南方のカルスト台地に特有の石灰岩の奇形性とその造景への好奇心。(2)柳宗元にとっての山水の“美"は、流罪の身にして異土他郷にあることを原因として、単なる景観観賞的なものではなくて精神的平安をもたらすものとして希求され、それは抱擁的構造の山水空間の追求によって達成される。〈精神的不安→(石灰岩による奇形的造景+山水空間構造の抱擁性)→安心〉=美。6、柳宗元の山水文学は游記の他に詩歌も主要な部分である。(1)詩歌において、故郷はしばしば叙景のから抒情に展開する形で詠まれ、したがって多くの山水詩は望郷詩でもある。(2)意識される故郷には四つの地があり、祖籍・河東の他に、長安城内の親仁里と善和里に本宅が、長安県の細柳原と豊水との間、豊楽郷かその近くに荘園があった。(3)長安の荘園は士人としての経済的拠点、人間形成の拠点、創作活動の拠点として機能していた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 戸崎哲彦: "柳宗元の故郷と唐長安城" 彦根論叢. 296. 1-21 (1995)
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[Publications] 戸崎哲彦: "柳宗元の荘園と唐長安県" 滋賀大学経済学研究年報. 2. 43-78 (1995)
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[Publications] 戸崎哲彦: "柳宗元の荘園経営" 彦根論叢. 298. 41-62 (1995)
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[Publications] 戸崎哲彦: "柳宗元永州山水游記考" 中文出版社高畑昭, 860 (1996)