1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610451
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 光暁 青山学院大学, 経済学部, 助教授 (30176804)
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Keywords | 編集史 / 敦煌毛詩音 / 中原音韻 / 華夷訳語 / 経典釈文 / 反切 / 揚雄『方言』 |
Research Abstract |
1文献調査 大阪の武田科学振興財団・杏雨書屋において現存唯一の元刊本『中原音韻』と明代写本の『華夷訳語』の原本を調査した。また、名古屋の真福寺大須文庫蔵の原存最早期の北宋本『広韻』および『礼部韻略』などの写真を入手し、書誌学的研究を行った。 2基礎資料の機械入力 OCRにより『古事記』『日本書紀』歌謡の万葉仮名の機械可読テキストに着手した(未完成)。また、「敦煌毛詩音」と『経典釈文』の「毛詩音義」の対応箇所も入力した。 3編集史的研究 「敦煌毛詩音」については『経典釈文』に引用された音義書の反切を土台として、反切下字はほぼそのまま流用し、反切上字は等位・開合一致原則に合致しないものを体系的に更新したが、一等・三等C類韻ではほぼ在来の反切上字を保存し、そのため平声・上声・入声が反切上字として用いられるが、「毛詩音」の作者が改造した反切上字はほぼ一律平声となっていることを見いだした。 また揚雄『方言』の研究も行い、注に用いられる「謂之」と「曰」の分布に基づいてその成書過程が相当程度推定できることを見いだした。即ち、この二つの表現はほぼ同じ文脈で用いられ、意味用法上の差異はない如くであり、おおむね項目毎のいずれか一つの表現が専ら使用される傾向があり、そしてこの二つの表現を混用する項目では「曰」を含む内容の方が後から付加されたものと見なすべき証拠が見いだされた。揚雄は『方言』の編纂に二十数年かけたと言われるが、この二つの表現はその編集の前期・後期においてそれぞれ使われたものと思われ、どちらの表現を使うかに応じて資料の来源を少なくとも二期に区分することを可能にする指標となるものである。 以上の二つの発見を近々論文にまとめてしかるべき学術雑誌に発表したいと考えている。
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