1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610483
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 紀之 金城学院大学, 文学部, 教授 (00079451)
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Keywords | フェアリ-・クィーン / エドマンド・スペンサー / 本文校訂 / 植字工 / 綴り字 / 異本校合 / プレス・バリアント |
Research Abstract |
テキストのコンピュータ入力とその校正は完了し、本研究の主目的であるテキスト確定とテキスチュアル・ノ-ツ作成の作業に入っている。その過程で、1609年出版の二つ折り本のテキストも参照しているが、この版の編者は1596年版の単純な誤植の機械的な訂正にとどまらず、文学的に的確な判断により校訂をしていることが多く、編集の質が相当に高度であることが判明した。本研究の直接の対象ではないが、The Faerie Queeneの本文研究の集大成のためには、今後はこの版についての本格的な書誌学的分析も必要となろう。 異本校合からは少数ではあるが、新たなプレス・バリアントを発見することができた。1590年版(第1巻〜第3巻)については、その巻末に付された正誤表の分析と合わせて、印刷所における校正の様態、および詩人スペンサーの関与の仕方などについて推定する上で、ある程度の根拠を得ることができた。特に、綴り字韻の不揃いについては、詩人、植字工の双方にとって校正の対象とはならなかったことが、ほぼ明らかとなった。これに関しては、「詩人の意匠と植字工」と題して、日本スペンサー協会編による論集に投稿中である。 1596年版(第4巻〜第6巻)の印刷工程および植字工分析については、フランク・B・エバンズの先行研究(1965年)があるが、ごく簡単な綴り字テストによる追跡調査を行った結果、十分に信頼できるものであるとの確証を得た。この版の印刷工程をさらに明らかにすることは、当面の目的にとって必須ではないので、当初計画していた独自の再調査はせず、必要な知見は彼の研究に衣拠することとし、今後その分の時間を各種の作業の精度を高めるための点検にあてる。
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