1996 Fiscal Year Annual Research Report
フランス語の話し言葉に見る文法の形式過程に関する研究
Project/Area Number |
07610492
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (10135486)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60129947)
|
Keywords | フランス語 / 話し言葉 / 会話分析 / 談話 |
Research Abstract |
本年度は、テープに録音された会話フランス語を文字に転写した資料を用いて、実際に話し言葉のフランス語に見られる語彙と文法手段の分析を行なった。その結果、次のような点が明らかになっている。 まず、現実の会話は、話し手と聞き手の共同作業によって作られるものである。構文などの文法的手段は、話し手が発話に際して、まったく一方的に選ぶものではなく、聞き手(より詳しくは聞き手の認知状態)を考慮して選択される。この事実は、言語を相互作用のなかで理解するという新しい言語研究のパラダイムの有効性を強く示唆するものである。 次に、会話のなかで話題になる指示対象に焦点を当てて分析したところ、次のような傾向が見られることがわかった。談話のなかに新たに指示対象を導入する場合には、フランス語では例えばilya構文を用いるなどのいくつかの手段があるが、最も多用されるのは、動詞の直接目的語として導入するというものである(ex.Tu vois une maison la?)。特に話し手・聞き手を指標として導入するケースが多くみられる(Moi,j'ai un ami.)。これは、談話に唐突に新たな指示対象を導入することを避けるという方略の現れと解釈できる。 会話フランス語で、不定名詞句主語がいちじるしく少ない(分析したコーパスではわずか全体の3%)ことも、この方略と密接な関係がある。文の主語は無標の主題の位置であり、新しい指示対象を表す不定名詞句は、主題の位置からはずすという極めて強い談話的傾向が観察される。このために、会話フランス語では、書き言葉のフランス語とは、非常に異なる名詞句の分布傾向を示している。
|
Research Products
(1 results)