1995 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシア文学、とりわけ叙事詩と悲劇における女性像
Project/Area Number |
07610531
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Ichimura Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
西村 賀子 市邨学園短期大学, 生活文化学科, 助教授 (30180649)
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Keywords | ホメロス / 女性像 |
Research Abstract |
本研究の対象は叙事詩と悲劇であるが、そのうち今年度は対象を叙事詩、とくに『オデュッセイア』に限定して研究を進めた。なかでも、女性の登場人物のうちで特異な存在であるキルケ-をめぐって第10巻を取り上げることにした。研究の予備段階において、『オデュッセイア』第10巻のキルケ-・エピソードのひめる可能性に気付いたためである。というのは、このエピソードの本叙事詩での語り口が、ラテン文学のウェルギリウス『アエネイス』第7巻およびオウィディウス『変身物語』第14巻で語られるキルケ-像と興味深く異なっている。そしてこれら3篇の作品でのエピソードの取り上げ方を比較することによって、『オデュッセイア』のキルケ-の特質が浮かびあがるとともに、ひいてはこの作品における女性観やその表現の特徴を明らかにすることができると考えられるからである。キルケ-はカリュプソ-としばしば比較されるとともに、ペ-ネロペイアとの類似性も認められるため、キルケ-についての考察は、その場面のみならず全編の解釈とも緊密に結びついている。また女性像にテーマをしぼると『イリアス』を扱う機会が少なくなるが、キルケ-の場面には『イリアス』第24巻との表現上の類似が多いため、intertextualな観点からの考察も可能である。 このテーマは6月の学会発表に採択され、もっかその発表にむけて研究の充実をはかりつつある。
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[Publications] 西村賀子: "『オデュッセイア』のキルケ-" 日本西洋古典学会. (学会発表予定).
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[Publications] 西村賀子(共著): "『創成神話の研究』(「古代ギリシアの創成神話」担当)" 月本昭男編 リトン社刊(4月予定), (1996)