1995 Fiscal Year Annual Research Report
清代に於ける財産犯罪、特に窃盗罪の構造を解明することにより清代社会の特徴を見る。
Project/Area Number |
07620010
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
森田 成満 星薬科大学, 薬学部, 助教授 (10147887)
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Keywords | 清代刑法の窃盗罪 / 清代の家産の法構造 / 清代刑法上の臓物 |
Research Abstract |
まず、当初の計画に沿って東大東文研、京大人文研、東洋文庫等の機関に所蔵してある清代刑法関係の史料を丹念に見た。必ずしも目新しいものが探索できた訳ではないけれどもそれなりの成果を得た。 ついで、それらの史料の窃盗罪に関係する部分を中心として読んでいった。その成果は公開論稿に記してあるので、ここでは極く簡単に触れるに止める。清代刑法の窃盗罪の特徴の第一は、現代法の背任とか横領に相当する犯罪が、窃盗罪として処罰されていたということである。それだけ信用に基づく経済秩序が未発達であり、犯罪概念が細かく分かれていない。第二は、家族間には窃盗罪はないということである。また、家産の所有は現代法にいう権利能力なき社団の財産のそれに類似するのであって、家産の支配秩序は新しくとらえなければならないと考える。家族の家産に対する支配は身分的な支配を含むものであって、物権としての所有権はそこには存在しない。従来の学説のように共有か合有かを議論するのは良くない。 窃盗罪を探究したことにより、それ以外の財産犯罪についてもある程度その輪郭が見えてきた。将来、それらの解明もしてみたいと考えている。窃盗罪という小さなテーマから、清代の社会や経済のありかたの特徴の一端が、特に現代法、現代社会との比較の下で見ることができたと考える。
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