1995 Fiscal Year Annual Research Report
三当事者取引における各当事者の利害調整に関する比較法的研究
Project/Area Number |
07620025
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
関 武志 新潟大学, 法学部, 教授 (30187835)
|
Keywords | 継続的債権関係 / 不安の抗弁 / 事情変更の原則 / 信義則 |
Research Abstract |
本年度(平成7年度)は,(1)三当事者が密接・不可分に関与する典型取引の中で,直接の契約関係にある当事者の間で生じる利害対立の場合を,公刊の裁判例の中から選出した。その結果,継続的債権契約において当事者の一方が給付拒絶を主張した場合が多かった。そこでの事案は,商品・サービス等の供給者が出荷停止をして相手方に対し代金等の請求をした場合と,反対に出荷停止が債務不履行であると主張して相手方が損害賠償を請求した場合とに分けられた。次に,(2)この当事者間における利害対立の状況について類型化を試みたところ,相手方の不誠実な行為により,あるいは,例えば先給付権利者が他から安価の商品を仕入れて販売したなどの不信行為により,信頼関係が破壊されたと認定されているのが特徴的であった。しかも,そこでの法的効果としては,不安の抗弁や契約に解除の主張が認められ、その法的根拠の特色としては,事情変更の原則ないしその包括概念である信義則が挙げられている,などの知見を得るに至った。また,この研究過程では,継続的契約関係における紛争状態を,本研究者が所属するドイツ民法研究会(平成7年7月13日開催)において研究報告を行い,知見の整理に役立ててきた。 なお、こうして裁判例の検討や理論構成の方向性を示すことができた一方で、現代型信用取引の夥しい形態に接したとき,その統一的な理論構成には相当の困難さが潜んでいる,との問題状況を改めて実感することになった。そこで,本研究は,次年度では本年度の研究成果を更に発展させ,これを公表する計画を立てるに至った。
|