1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07620040
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村中 孝史 京都大学, 法学研究科, 教授 (80210053)
|
Keywords | 労使関係 / 労働組合 / 労使紛争 / 紛争処理 / 労働委員会 |
Research Abstract |
労働組合組織率の低下は、労働法に様々な影響を与えると考えられるが、その一つとして紛争処理の問題がある。本年度は、当初の予定を若干修正し、主としてこの問題を検討した。 労働組合の役割は、主として団体交渉を通じて労働条件の維持、改善をはかることにあるが、紛争処理という観点からみても重要な機能をはたしている。したがって、組合の組織率が下がると、様々な問題が生じると考えられる。まず、労働条件を使用者が一方的に決定するため、労働条件の悪化を招き、また、労働条件の決定過程に労働者が関与できないため、当該労働条件に対し不満が生じると思われる。また、労働組合は、集団的な利益紛争ばかりでなく、労働者個々人と使用者との間の紛争についても、これに介入することで、紛争の円満な解決をはかれるが、組合が存在しない場合には、かかる形での紛争解決は望めない。 このように、労働組合の組織率低下は、なるほど一方で集団的な利益紛争を減少させはするであろうが、反対に個別的な紛争を増加させると思われる。しかし、我が国においては、個別的労使紛争の処理について、労働委員会のような専門機関は設けられていない。したがって、今後は、個別的労使紛争の処理のために、特別な手当てをする必要があるのかを検討する必要がある。これにあたっては、紛争の性質に応じた対応が求められる一方、コストの問題も無視できないと考えられる。
|