1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07620040
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
村中 孝史 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80210053)
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Keywords | 労働法 / 労働組合 / 労働契約 / 労働基準法 / 労働協約 / 就業規則 / 労働条件 / 労働基準監督署 |
Research Abstract |
本年度は、理論面での研究を中心に行った。労働組合組織率の低下に伴い、集団的労使関係の機能低下が予想されるが、前年度までのヒアリング調査によれば、数字以上に集団的関係の機能が低下しているのではないかとの印象を得た。このような事実認識に基づき、労働法が、今後、労働関係の当事者間に社会的公平にかなった規範をいかなる形で提供していくべきなのか、との問題を検討した。この方法には、集団的関係を再構築するという方法がまず考えられる。近時における最高裁判決は、有力学説と同じく、労働条件が多数組合との間で協議されているか否かという点を重視しており、これによれば、集団的関係の再構築という手段は非常に重要なものとなる。ただ、現在のように、組合加入が労働者の任意にまかされた状況を前提にする場合と、たとえば強制加入の従業員組織の場合とでは、集団的決定の正統性の点で相違があることに注意しなければならない。冒頭に述べた事実認識に従えば、何らかの法定組織を規定する必要性があるように思われるが、その際、この点を十分に考慮すべきである。 他方、集団的決定の限界を認識しつつ、個別的関係を中心に労働者保護をはかることで社会的公平を確保するという手段も考えられる。従来の労基法は最低基準を提供するものであったが、これに加えて労働契約法を制定することで、基準的労働条件を法定していくというものである。ただ、この場合、我が国の労基法運用の現実を考慮する一方で、民法典の典型契約とは区別された労働契約法制のあり方を考える必要がある。いずれにしても、裁判制度が労使紛争にとって必ずしも利用しやすいとは言えない現状を考えると、監督行政を放棄して、すべてを契約法に委ねることは不可能である。
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