1995 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝学,遺伝相談,遺伝子治療に対する倫理的・法律的問題の比較法的研究
Project/Area Number |
07620041
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丸山 英二 神戸大学, 法学部, 教授 (10030636)
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝相談 / 遺伝検査 / インフォームド・コンセント / 守秘 |
Research Abstract |
本年度は,遺伝学の基礎的知識の習得に努めるとともに,(1)遺伝検査の実施に対するインフォームド・コンセントの問題,(2)遺伝情報を理由とする差別の問題,(3)遺伝情報の守秘の問題について研究について研究を行った。 (1)については,(a)新生児に対する先天性代謝異常に関するマス・スクリーニングをめぐる問題について日米の状況を調査した。アメリカでは,この検査に対する親の同意の要否については,州毎に区々であった。ほとんどの州で宗教上の理由による受検拒否が認められているが,拒否できることについての説明を義務づけてはいなかった。これについて学説は,早期の治療の有効性から是認する見解が一般的であるが,治療方法が存在しない異常については,強制的にスクリーニングを行うことに否定的な意見が大勢を占める。わが国でも,同様のマス・スクリーニングが行われているが,兵庫県の15ほどの病院で調査したところ,インフォームド・コンセントがとられているところは少なかった。(b)また,患者の治療ではなく,保因者診断や出生前診断を一次目的とする遺伝子検査が同意能力のない患児に対してなされる場合,親の念頭には,患児の利益だけでなく,新たな患児の出生の回避という目的があり,子に対する医療についての同意権が親に与えられる通常の状況と異なる状況が見られるが,そのことについての医師の認識は低く,何らかの保護策を講じる必要性の検討が求められた。 (2)については,保険加入と雇用における問題について研究を進め,(3)については,精神医療やAIDSなどの感染症の場合と対比させながら,第三者への危険を回避するための遺伝情報の第三者への開示の問題を研究した。 なお,遺伝子治療の開発をめぐる問題を考える予備作業として,臨床研究に関する規制のあり方を,合衆国の規則を中心に研究した。
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