1996 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝学、遺伝相談、遺伝子治療に対する倫理的・法律的問題の比較法的研究
Project/Area Number |
07620041
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
丸山 英二 神戸大学, 法学部, 教授 (10030636)
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Keywords | 遺伝相談 / 遺伝子検査 / 妊娠中絶 / インフォームド・コンセント / 臨床研究 |
Research Abstract |
1 医師の過失のために避妊・中絶の機会が失われたことによって障害児が出生した場合に親や子が提起するいわゆるwrongful birth/wrongful life訴訟をめぐるアメリカの判決を網羅的に分析した。最近の傾向を要約すると,1980年代前半に確立された原則が定着したということになる。訴訟原因の成立については,親の提起するwrongful birth訴訟に関しては大半の州で肯定され,子が提起するwrongful life訴訟に関しては3州を除いて否定されている。救済については,大部分の判決が通常外の医療費について認容するが,親の精神的損害については法域によって認否が二分されている。いずれにせよ,個々の法域についてみれば,この問題に関する原則は確定したといえるところが大部分である。そのせいか,最近では,この分野の公表判例が減少する傾向が見られた。 2 出生前診断の適応疾患,インフォームド・コンセント,カウンセリング,遺伝情報の守秘,第三者への告知など,遺伝相談・遺伝学的検査の問題点について,Wertz,Fletcher,Berg & Boulyjenkov,GUIDELINES ON ETHICAL ISSUES IN MEDICAL GENETICS AND THE PROVISION OF GENETICS SERVECES(1995)(WHOガイドライン草案)をはじめ,アメリカ,イギリス,カナダ,日本人類遺伝学会,日本不妊学会のガイドライン(一部は草案)や報告書を検討した。WHOガイドラインについては,適応を妊婦の判断に委ねること,胎児罹患の診断の場合における妊婦の判断を無条件に自由なものとしていないことに問題が感じられた。 3 遺伝医学など先進的医学分野での倫理的・法律的問題を考える際に臨床研究に対する法的・倫理的規制が重要であることに鑑みて,アメリカ厚生省の規則を研究し,翻訳した。
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