1996 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンの中産階級と政治-フィリピン民衆革命と8月21日運動を中心に
Project/Area Number |
07620049
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
木村 昌孝 茨城大学, 人文学部, 助教授 (10240681)
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Keywords | フィリピン政治 / 中産階級 / 中道勢力 / バンディラ / 8月21日運転 / フィリピン民衆革命 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1986年のマルコス独裁を倒したフィリピン民衆革命にみられる中産階級の政治勢力の重要性を認識し、中産階級の政治集団の一つである「8月21日運動」を中心に当該政治勢力を組織、イデオロギー、政策プログラム及び具体的活動の観点より記述分析しその政治的役割と意義を考察することであった。 平成7年度においては、1983年8月21日のアキノ暗殺から1986年2月の民衆革命を経て1992年5月の大統領選挙までの期間を対象に、「8月21日運動」も参加した中道政治勢力の連合体であるバンディラの同期間における歴史的記述及び分析を行った。 平成8年度においては、「8月21日運動」を中心にフィリピン中産階級の政治勢力を構成する諸集団の組織形態、イデオロギー的傾向、政策及び活動について分析し、その政治的役割と意義を考察した。 (1)組織形態に関しては、50名以下の小集団が最も多く、100名以上の集団は少ない。 (2)イデオロギーに関しては、社会民主主義を標ぼうしているものが最も多く、他に自由民主主義及びキリスト教民主主義を掲げているものが小数存在するが、実際には彼らのイデオロギー指向は表面的なものに過ぎない。(3)包括的政策プログラムを持っている集団は殆どなく、特定の問題に対する関心が強い。(4)集団のメンバーは、中産階級に限定されているものと、限定されていないものがあり、後者の場合上層階級出身者がリーダーとなっていることが多い。 (5)政治活動は、多数の集団が特定の問題ごとに連合体を形成することにより行われる。 今後の課題は、これまでの研究成果を他の発展途上国の中産階級の研究との比較の文脈に置き、理論的一般化を試みることである。
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