1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07620054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 浩 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10009821)
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Keywords | 現代新儒学 |
Research Abstract |
1.研究補助者の多大な協力により、現代新儒学関係資料の探索は、かなり進み、中国本土・香港・台湾を中心とした現代新儒学関係の資料の全体的な発行状況が概ね把握できた。日本では、現代新儒学を全体として研究の対象とするということが、管見の限り前例のない試みであるため、この作業に、相当の時間と労力を要したが、他面、このような作業がこの対象についての研究の必須の基礎的部分をなすという現状からすれば、このこと自体が、一つの重要な成果であると考えられる。 2.探索しえた資料の相当部分については、研究補助者の協力により、発注・購入・整理が進み、既に、その大部分を所属機関の図書室に納め、利用可能の状態にすることができた。 3.整理・配架済みの資料の一部については、既にその内容の分析を開始し、進めている。無論、資料は相当量にのぼっているため、まだ確定的な結論を出しうる段階ではないが、さし当たり、以下の諸点が注目される。(1)現代新儒学と概括される思想も実はかなり多様であり、それは、世代の相違のみで説明できるものではなさそうである。(2)少なくとも一部の新儒学者は、その西洋近代の主流をなす政治思想との関係において、日本の一部の思想家(例えば、横井小楠・阪谷朗廬・中江兆民)との類似性が明らかである。これは、儒学と西洋近代思想との、単に相互否定というのではない複雑な関係を示唆していると考えられ、それをさらに解明すれば、従来の通説的儒学理解全体に修正を迫ることになりうる。
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