1996 Fiscal Year Annual Research Report
「19世紀フランス・第二帝政期におけるパリ都市改造に関する歴史的研究」
Project/Area Number |
07620056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
羽貝 正美 新潟大学, 法学部, 教授 (60208410)
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Keywords | 都市政策 / 都市行政 / 都市計画 / パリ改造 / フランス / ヨーロッパ / 都市史 / オスマン |
Research Abstract |
平成7年度を初年度とする3カ年の研究計画の第2年目にあたる平成8年度は、前年度の研究実績を基礎としつつ、第二帝政期の都市改造事業のプロセスを多様な角度から,より実証的に検証することを研究課題とした。 考察の結果、大別して以下の二点が明らかになった。(1)人民の支持を体制存続の最大の条件とする第二帝政という政治体制にとって、大規模な都市再開発は、経済活動の主体たる事業者(とくに金融資本、建設業)に強力なインセンティブを与え、経済全般の拡大と安定を確保する手段であった。公用収用権限の行使による都市空間の再編は、不動産市場そのものを、ひいては経済それ自体を活性化することであり、欧州における第一の国際都市としての威信を獲得するうえで不可欠であった。こうした側面は政府の最大の関心事であった。(2)しかし、この都市空間の再編は、近代的・衛生的な都市居住空間の創出という極めて重要な意味をも有していた。公園、街路、上下水道、病院など、現代都市に不可欠の都市基盤・社会資本の整備が推進され、都市の公共空間が確保された。こうした特質は都市形成におけるいわばパラダイムの転換を物語るものであり、現代都市政策の原型をここに見出すことができる。この分野における多数の技師、技官らの貢献は決して過小評価できない。首都パリにおける試みをいわば雛型として、小規模ながら実現された地方都市での都市改造をも視野に取り込むならば、第二帝政期の都市改造は、都市の秩序形成に行政がどのようにかかわるべきなのか、都市の公的な制御とはどうあるべきなのか、について大きな一歩を踏み出す決定的な契機となったものと把握できる。最終年度たる平成9年度では、改造事業の細部を検証しつつ、欧米の近・現代の都市政策および都市行政におけるパリ改造の歴史的意義を明確にするとともに、併せてその全体像を構築することを課題としたい。
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