1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07620065
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
真渕 勝 大阪市立大学, 法学部, 教授 (70165934)
|
Keywords | 産業政策 / 大蔵省 / 日本銀行 / 通産省 / 政府系金融機関 / 融資判断 / ネットワーク / 民間銀行 |
Research Abstract |
本研究の目的は、民間金融機関による資金供給を通じた産業政策の形成と執行の動態を、明らかにすることにある。 日本の経済的成功の原因を何に求めるかについて、すでに数多くの研究がなされている。そこではさまざまは主張がなされてきたが、議論の焦点は、経済成長における政府の役割をどのようにとられるかということにあった。 一方に政府の役割を強調する政府主導論があり、他方に民間企業の側の活力を重視する市場規制論がある。そしてこの両極端の見解の間に、様々に意匠を凝らした、政府と企業・産業との協力関係を強調するネットワーク論がある。 政府に積極的な役割を認めない市場規制論は別にして、政府主導論およびネットワーク論のように政府が多かれ少なかれ積極的な役割をはたしたとする主張において、従来明らかにされてこなかったのは、政府内における経済官庁の関係、具体的にいえば大蔵省と通産省の関係である。政府主導論およびネットワーク論は、産業と金融の相互関係を分析してこなかったのである。ポイントは、通産省の産業政策が、財政あるいは金融という経済的手段を通じて展開される限り、通産省とは異なるパースペクティブをもつ大蔵省との協議の上で行われなければならないことある。 本研究の目的は、「産業政策を構想する意欲と情報を有するが、それを実施する能力の不十分な」通産省と「産業政策を実施する能力はあるが、それを構想する意欲と情報を持たない」大蔵省・日本銀行との関係を明らかにし、それが産業政策の内容にどのような影響を及ぼしたかを解明することにある。 7年度は金融メカニズムを調査研究した。問題となったのは以下のような「問い」であった。 民間銀行はどのような経路を通じて政府の政策意図を受け取り、どのような情報をもとにしてそれを評価したのか。通産省はどのようにして民間銀行に影響力をもつ大蔵省の協力を得たのか。日本銀行による窓口指導はどの程度まで産業政策的な意図と効果を持ったのか。政府系金融機関の融資活動はどの程度まで民間の銀行にとってシグナルの役目を果たしたのか。7年度の研究目的は、政府系金融機関が融資判断の際に採用する「政策的基準」は何かという問いに答えることに絞り込まれた。調査の結果、政府系金融機関の「政策性」は、戦略的に重要ではあるがリスキーな産業・企業に対して融資をするということではなく、融資に先立つ調査を積極的に行うことにあることが明らかになった。政府系金融機関の特色は融資のリスクではなく、融資判断のコストを引き受けることにあったのである。このような特色は政府系金融機関に「政策性」を付与すると同時に、政府からの「自律性」を保障するものであるというのが結論である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 真渕勝: "国家の銀行-復興金融金庫と日本開発銀行" 年報政治学1995. 31-56 (1995)
-
[Publications] Madaru Mabuchi: "Financing Japanese lndustry" Hyung-ki kim ed.The Japanese Civil Service and Economic Development. 288-310 (1995)
-
[Publications] 真渕勝: "官僚" 伊藤光利編 ポリティカルサイエンス事始め. (近刊). (1996)