1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ共通農業政策の下での東ドイツ集団農業の再編に関する実態研究
Project/Area Number |
07630028
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 國彦 東北大学, 経済学部, 教授 (70004207)
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Keywords | 農業 / 社会主義 / 集団化 / 家族経営 / 経済体制 / 市場経済移行 / 大規模化 / 私有化 |
Research Abstract |
実に驚くべきことに、東独農業の体制転換においては集団農業の多くが、形を変えて引き継がれている。1995年には、人的会社(社員に無限責任)の形をとる農場が平均規模449haで農地の21.7%を占め、協同組合などの法人のそれが平均規模1092haで農地の57.4%を占めた。両者合わせると農地の約8割を占めている。平均規模は法人農場でも旧東独時代の4分の1であるが、西独農家の平均規模は22haであり、100ha以上の農家は2.3%(農地の13.9%)にすぎないのと比べると、その大規模さが理解できる。しかも一旦は個人農として自立した農家の多くもなんらかの共同組織に再結集している。110万haの国有農地の長期賃貸も約6割が法人農場あてとなった。 このことは旧ソ連東欧諸国の中で例外的現象であり、またドイツ連邦政府の当初の家族経営優遇方針に反した結果である。その原因および具体的経過の解明には今後の更なる調査が必要であるが、他の旧ソ連東欧に比べた旧東独農業の相対的成功、その担い手であった旧幹部の指導力、東独関係諸官庁等に生き残った旧人脈、変革時の資産トリック、西独内の大規模農家層や農機具メーカーや穀物商社との提携、個々に自立するには少なすぎた持ち分農地、東独各州政府の「将来性ある農場の育成」方針、その他の種々の要因が作用している。 このような大規模経営群がヨーロッパに突如誕生したことの影響は大きい。これらの大規模経営は目下大幅人員削減(東独農業就業者は89万人から16万人に減少)と新鋭機械導入などによる生産性向上をはかっており、それは、一方で競争力の発揮となり、西独や他のヨーロッパの農民への脅威となるとともに、同時に東独農村における高失業率の長期化ないし過疎化という問題を発生させている。
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