1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07630052
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清野 一冶 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (00183038)
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Keywords | カルテル / 戦略的行動 / 独占 / 交易条件 |
Research Abstract |
本年度は、輸出活動を行う競争的産業が、政府による行政指導のもとに、輸出カルテルもしくは国内販売カルテルを形成するとき、それがどのような経済効果を及ぼすかについて分析した。とりわけ重要な点は、国内・海外のいずれかの市場におけるカルテル形成が他方の市場に及ぼす影響、ならびに現実には産業側による戦略的な行動により国民経済厚生ではなく産業自身の利益を高めるようにカルテル政策が編まれる傾向がある点を考慮した点にある。得られた主要な結論は下記の通りである。 第1に、例えば輸出カルテルでは、多くの場合、輸出量の抑制が国内生産・販売の限界費用の低下を通じて、国内販売量を増やす傾向があることが確認された。逆に国内販売カルテルでは、輸出限界費用を低めることを通じて、輸出拡大のインセンティブを生み出す傾向があることが明らかとされた。このことから多くの場合には、輸出先経済にとっては輸出カルテルは交易条件の悪化を、そして国内販売カルテルは交易条件の改善をもたらす傾向があることになる。 第2に、カルテル形成時に産業側の戦略的行動により産業全体の利益最大化が目指されるときには、国民経済厚生の最大化が目指される場合に比べて、輸出カルテルならば輸出量抑制の、そして国内販売カルテルならば国内販売量抑制の規模が小さくなる傾向があることが明らかとされた。産業側の戦略的行動は、次のように定式された。すなわち例えば輸出カルテルの場合には、あらかじめ決められた輸出割当枠を与えられたものとしてカルテル政策が課されない自由な競争が可能な国内市場で競争が繰り広げられる。産業はそうした国内市場では自由な競争が繰り広げられることをあらかじめ読み込んだ上で産業全体の利潤を最大化するように輸出割当枠を決定するのである。輸出カルテルの場合には、国内販売量を抑えて国内販売からの利潤も確保しようとするインセンティブが働き、実現する輸出割当量は国民経済厚生を最大化する場合に比べて小さくなる傾向がある。 第3に、カルテル形成が産業側の戦略的行動に誘導されるもとでは、多くの場合、国内販売カルテルに比べて輸出カルテルの方が経済構成上望ましくなる傾向がある。これは、輸出カルテルの場合には輸出量抑制から交易条件改善が生まれるのに対して、国内販売カルテルでは輸出量拡大から交易条件悪化が発生するからである。 研究成果は英文論文としてとりまとめたが、現在日本語に翻訳して国内のレフェリー雑誌に投稿することを予定している。
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