1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07630052
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清野 一治 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (00183038)
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Keywords | 戦略的行動 / コミットメント / ルールと裁量 / 自主的輸入拡大 / カルテル / 行政指導 |
Research Abstract |
本年度は、(1)昨年度に草稿を完成したカルテル政策に関わる論文ならびに(2)国際寡占産業における自主的輸入拡大政策とそれに対する輸入国政府のコミットメントの生むが政策効果に及ぼす影響について理論的研究をとりまとめ、discussiorpaperとしてそれぞれまとめあげる予定である。(1)については、既に昨年度末に、英文の論文をとりまとめており、その後それを邦文としてまとめ直す予定であったが、現在のところ、完成に至っていない。(2)が今年度における新しい成果である。その具体的内容は下記の通りである。 従来の自主的輸入拡大については、輸入国政府が(a)どのくらいの規模の輸入量を望ましいと考えるか、(b)それを実現する上で外国企業に対して輸入補助金等を供与するのか、それともターゲットとなる輸入規模が実現できないときに国内企業に対して罰則としての課税のいずれを持って輸入拡大を図るか、そして(c)こうした自主的輸入拡大措置を実際に実現する輸入規模をみて裁量的に実行するか、それとも制度として組み込むかという3つの問題は明確に取り込まれてこなかった。今回の研究では、この問題を重視して、次のような成果を得た。 第1に、輸入国政府が(自由貿易に比べて多い)ターゲットとなる輸入規模を実現するべく、自主的輸入拡大を制度化する、つまり輸入拡大にコミットするときには、政策手段が輸入補助金であれば、外国企業は戦略的に輸入量を抑えて、輸入国政府からでいくらでも多くの補助金を獲得しようとして均衡が存在しなくなる。国内企業に対する生産・販売課税であれば、こうした問題は起らないが、自由貿易に比べて国内財そして輸入財のいずれの価格も上昇してしまう。 第2は、輸入国政府が実現する輸入規模を観察したあとで、裁量的に自主的輸入拡大政策を実施する場合である。この場合には、自由貿易に比べて国内財・輸入財のいずれの価格も、政策手段が輸入補助金であれば低くなるが、国内企業に対する生産・販売課税であれば高くなる。
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