1995 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本における大都市流入者のライフコースの実証的研究
Project/Area Number |
07630065
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加瀬 和俊 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (20092588)
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Keywords | ライフコース / 世帯形成 / 初職選択 / 転職 / 都市流入者 / 職業紹介 / 縁故採用 / 朝鮮人渡航者 |
Research Abstract |
本年度は計画にしたがって、戦前期における都市流入者の職業選択事情(初職選択、転職)についての検討を進め、これまでに以下のような知見を得た。 (1)大都市流入年齢については、女子は10才代に集中しているのに対して、男子は小学校卒業直後と微兵検査(ないし兵役除隊)直後とに分かれており、それぞれに出身府県別・選択される職業の別が対応している。 (2)少年職業紹介関係の資料等によると、10才代の流入者の場合には縁故関係を頼って定着する者が多く、引受人の職業との一定の相関関係が読み取れる。これに対して、成人後流入者には縁故関係のある者とない者が区分され、その就職分野が異なる傾向がある。 (3)収集した個人別の転職事例による限り、都市流入者が職業移動を頻繁にしているのに対して、都市出身者は転職回数が少ない。これは初職選択時の情報量の差と、安定的企業が確実な身元保証人等を得やすい都市出身者を優先的に採用した結果であると考えられる。 (4)戦間期の官庁・企業の雇用において、公的な専門資格の持つ意味は相当大きい。地方からの都市流入者の場合、上昇型の転職を達成した者はこのルートに乗った者に限られる。 (5)官公庁雇用の一般現場作業員の場合、一般労働市場とは異なって、労働者の民族的属性の相違による賃金格差はなく、特に昭和恐慌期には民間作業員の労働条件との格差が拡大している。このことは、都市流入者の中の一大部分を占めた植民地出身者にとって、官公庁の臨時作業員から常雇作業員へと移行するルートの魅力を大きなものにした。
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